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部品調達コラム

環境負荷物質について

環境負荷物質について | ONIプレシジョン

近年、製造業における金属部品の調達、または加工において、環境物質使用規制は避けては通れない重要課題となっています。サプライチェーン全体での環境負荷低減が求められる中、調達部門の皆様には、これらの規制の種類、内容、そして適用業界を包括的に理解し、適切な対応を講じることが強く求められています。

環境物質規制を乗り越えるための共通基盤:ChemSHERPA

製品に含有される化学物質に関する情報を、サプライチェーン全体で円滑かつ正確に伝達・共有するための仕組みとして、ChemSHERPA(ケムシェルパ)が重要な役割を担っています。

目的

RoHS指令やREACH規則といった環境規制への対応を効率化し、部品や材料に含まれる化学物質情報を標準化された形式で伝達することで、調査にかかる時間やコストを削減します。これにより、製品含有化学物質情報の透明性が向上し、リスク管理や製品の安全性向上に貢献します。さらに、国際的な情報共有の促進も目的としています。

ツール

無償で提供されるデータ作成支援ツールには2種類あります。ChemSHERPA-CIは「化学品」または「混合物」を、ChemSHERPA-AIは「成形品」を対象としています。ChemSHERPAは、製品に含まれる化学物質情報を管理し、サプライチェーン全体で共有するための重要なツールであり、川上から川下まで統一した資料で材質証明を行うための基盤となります。

主な環境物質使用規制の種類と内容

RoHS2指令

RoHS2は、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するEUの指令です。その目的は、人の健康と環境の保護、廃棄物処理段階での有害物質による汚染の削減、そして電気・電子機器のリサイクルの促進です。

RoHSからの変更点

  • 対象製品の拡大:RoHS1では対象外だった医療機器(カテゴリー8)、監視・制御機器(カテゴリー9)が追加され、ほぼ全ての電気・電子機器が対象となりました。
  • 規制物質の追加:従来の6物質(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE)に加え、新たにフタル酸エステル4物質が規制対象となり、合計10物質となりました。
  • CEマーキングの義務化:RoHS2に適合した製品には、CEマークの貼付が義務付けられています。
  • サプライチェーン全体への責任:RoHS1では製造業者のみに法的義務がありましたが、RoHS2では輸入業者、販売業者を含むサプライチェーン全体に責任が課せられました。
  • 適合性評価と文書化:製造業者は、製品がRoHS2に適合していることを評価し、技術文書を作成・保管し、適合宣言書を作成する義務があります。

金属部品としては、コネクタ、はんだ、筐体などに含まれる場合があり、これらの部品調達においてRoHS2への適合は必須となります。

REACH規則

REACH規則は、人の健康と環境の保護、およびEU域内における化学物質の自由な流通の確保と産業競争力の向上を目的とした、EU(欧州連合)の化学物質規制です。

主な義務

  • 年間1トン以上の化学物質を製造または輸入する事業者は、その物質を登録する必要があります。
  • 川下使用者(製造者、輸入者以外の使用者)は、安全データシートに従って安全に使用する義務があります。
  • 特に懸念の高い物質(SVHC:高懸念物質)を含有する成形品を供給する事業者は、情報伝達をする必要があります。
  • 制限対象物質については、制限された条件に従う必要があります。

REACH規則は、化学物質のリスク管理を事業者の責任とし、サプライチェーン全体での情報共有を促進することで、より安全な化学物質管理を目指しています。金属材料自体に含まれる微量な不純物や、表面処理剤、潤滑油、加工助剤など、サプライチェーンのあらゆる段階で関連する可能性があります。

RoHSとREACHの違い

項目RoHSREACH
目的特定の有害物質による健康・環境リスクの低減化学物質全般のリスク管理、安全な流通の確保
対象範囲電気・電子機器に限定EU域内の化学物質の製造、輸入、使用、製品含有
規制対象特定の10物質登録対象の化学物質、SVHC、制限物質など広範
規制方法使用禁止(含有量閾値)登録、評価、認可、制限、情報伝達
主な義務特定物質の不含有、CEマーキング、適合宣言登録、情報伝達、SDS提供、リスク管理
情報伝達適合宣言書、技術文書安全データシート(SDS)、SVHC情報伝達

RoHSは製品に含まれる特定の有害物質に着目した規制であるのに対し、REACHはより広範に化学物質そのものの管理と、それらを含む製品全体におけるリスク管理を目的とした規制と言えます。

TSCA(有害物質規制法)

TSCAは、アメリカにおける化学物質の製造、輸入、使用、および廃棄を規制する連邦法で、EUのREACH規則に相当する法律です。

目的

人の健康や環境に不当なリスクを及ぼす化学物質を規制することです。

主な規制内容

  • 情報提供義務:化学物質の製造者、輸入者、加工者は、その物質の有害性に関する情報をEPA(米国環境保護庁)に提供する義務があります。
  • PBT物質の規制:PBT物質(難分解性、生体蓄積性、毒性を持つ物質)については、2021年に米国EPAがTSCA第6条に基づき、一部の使用を禁止しました。
  • 新規化学物質の規制、既存化学物質のリスク評価、PBT物質の規制、成形品の規制、情報提供義務など、多岐にわたる規制を含んでいます。

2016年の改正と2021年のPBT規制によって、TSCAの規制はより厳しくなっており、米国市場への部品供給を行う企業にとって重要な規制となっています。

調達部門に求められる対応

これらの規制への対応は、単なる法令遵守に留まらず、企業の社会的責任(CSR)を果たす上で不可欠です。

  • サプライヤーとの連携強化:サプライヤーに対して、使用物質の情報開示や規制への適合状況の確認を徹底することが重要です。契約時に環境物質に関する取り決めを盛り込むことも有効です。ChemSHERPAを活用し、共通のフォーマットで情報共有を進めることで、効率的な連携が可能になります。
  • 情報収集と知識のアップデート:規制は常に更新され、新たな物質が追加される可能性があります。関連情報の収集を継続し、社内での知識共有を図る必要があります。
  • 代替物質への切り替え検討:規制対象物質の使用が判明した場合は、早期に代替物質や代替技術への切り替えを検討し、サプライヤーと協力して対応を進めることが求められます。
  • 化学物質管理システムの構築:調達する製品や部品に含まれる化学物質を適切に管理するためのシステムを構築し、透明性の高い情報共有体制を確立することが重要です。

まとめ

環境物質規制への適切なご対応は、企業のブランドイメージ向上だけでなく、予期せぬリスクを回避し、持続可能なサプライチェーンを構築するための重要な経営戦略となります。
お見積もりやご注文の際には、ケムシェルパ(ChemSHERPA)や材質証明書などの書類が必要となるかどうかを、あらかじめサプライヤー様へご確認いただけますと安心です。
ご注文時に書類のご提出についてのご依頼が明確でない場合、提出されないこともございますので、恐れ入りますがご注意いただけますと幸いです。

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