アルミ切削プレートの勘所

特にアルミ切削プレートのような精密部品の調達においては、加工の特性を理解することで、より高品質な製品を、より効率的に手配することが可能になります。今回は、アルミプレート加工における「勘所」についてご紹介いたします。
目次
アルミ7000番と歪みへの対応
アルミ7000番台は高強度で航空宇宙分野などでも多用されますが、その反面、加工中に歪みやすいという特性があります。この歪みを抑制するためには、サプライヤーとの間で以下の点を確認することが重要です。
- 加工条件の最適化:切削量や切削速度、送り速度といった加工条件は、歪みの発生に大きく影響します。適切な条件設定には、サプライヤーのノウハウが不可欠です。
- クランプ方法の工夫:ワークのクランプ方法も歪み抑制の鍵です。過度な締め付けは変形やクランプ痕の原因となり、弱すぎると浮き上がりや工具破損につながります。適切なクランプ力やワークの形状に合わせた治具の活用が求められます。
- 応力除去:応力による変形を考慮し、荒加工と仕上げ加工の工程を分けることで加工後、クランプを緩めた際の変形を軽減できます。また、材料へ応力除去処理を行うことで、内部応力を解放し、歪みを大幅に軽減する効果があります。この工程の有無と実施タイミングについて、サプライヤーと綿密に打ち合わせする必要があります。
荒加工と仕上げ加工の分離、そして平面度の追求
アルミ部品において、研磨工程はコスト増に繋がるだけでなく、寸法精度を損なうリスクも伴います。そのため、「いかにマシニング工程で平面度を出すか」が極めて重要になります。
- 工具選択と加工条件:仕上げ加工に適した工具(刃物の材質、形状、コーティング)の選択と、それに応じた加工条件(回転数、送り速度、切込み量)の確認が不可欠です。
- クランプ方法の再考:仕上げ加工においてもクランプは重要です。ワークの向き、締付トルク、そしてワーク全体を均一にクランプできる治具の使用が、平面度を向上させるために役立ちます。トルクレンチによる数値管理も有効です。
- 均一な取り代:荒加工後の取り代を均一にすることで、仕上げ加工時の負荷を分散させ、歪みの発生を抑制しやすくなります。
- 中間での歪み取り:荒加工後に著しい歪みが発生した場合は、途中で歪み取りの工程を挟むことも検討すべきです。これにより、最終的な平面度をより高精度に実現できます。
- 切削音の確認:切削中の音から加工状態を判断するには、職人の感覚が求められます。音によって切削条件や工具突き出し量、クランプ状態の良し悪し等を判断できます。工具の摩耗によって熱が発生し、平面度に影響することがあります。
クランプ力の重要性と測定基準点
アルミ加工において、クランプ力は非常にデリケートな要素です。強すぎればワークの変形やクランプ痕、弱すぎればワークの浮き上がりや飛散による工具破損につながります。サプライヤーには、ワークの材質、形状、加工内容に応じた最適なクランプ方法を提案いただくことをお勧めいたします。
また、特にプレート状の薄い部品においては、測定の基準点によって加工精度が大きく左右されることがあります。サプライヤーがどの点を基準に測定し、加工を行っているのかを確認することは、意図しない不適合を防ぐ上で非常に重要です。アルミは研磨加工を極力避けるため、マシニング工程でいかに歪みを取り切り、板厚公差を出すかが腕の見せ所となります。場合によっては、あえて手締めで加工を行うこともあります。
特殊なアルミプレートと複合旋盤の活用
近年では、極端に薄い板厚のプレートや、内部が大きくくり抜かれた複雑な形状の部品も増えています。これらの加工では、ワークの剛性確保や加工中の振動抑制が課題となります。
複合旋盤(マシニングと旋盤機能が一体化した機械)の活用は、脱着回数を減らすことで段取り時間の短縮だけでなく、ワークのクランプ変更による位置ズレや歪みのリスクを低減する効果が期待できます。中が抜かれた部品など、加工工程が多いものほど、そのメリットは大きくなる傾向にあります。(ただし、複合旋盤にて製品をどのようにクランプするかが重要な点となります。)
まとめ
アルミ切削プレートの調達は、単に図面通りの加工ができるサプライヤーを見つけるだけでなく、その加工特性を理解し、サプライヤーと共に課題解決に取り組む姿勢が求められます。今回ご紹介した「勘所」を参考に、サプライヤーとのコミュニケーションを密にすることで、高品質なアルミ切削プレートの安定調達を実現いただけると幸いです。